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耐震コラム

大規模修繕とは?マンション管理組合が知っておきたい工事内容・進め方・周期の目安を解説

マンションの「大規模修繕」は、外壁や防水を直すだけの工事ではありません。 劣化の実態を調べ、長期修繕計画と照らし合わせて工事範囲を整理し、資産性と安全性を守る”一大プロジェクト”です。 本記事では、何年ごとに必要かの考え方や、工事内容・着工までの進め方、工事中のトラブル対策を、管理組合向けに解説します。

大規模修繕とは

大規模修繕(大規模修繕工事)は、マンションの資産性や住み心地を保つために欠かせない、いわば「建物の健康診断と治療」のような取り組みです。外壁や屋上防水など、年数とともに劣化しやすい部分を中心に、計画的にメンテナンスを行います。

ここで一つ、最初に押さえておきたい注意点があります。実は「大規模修繕」という言葉は、国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」と、建築基準法(建築確認などの手続判断)で、意味する範囲が少し違います。本記事では、マンションで一般に検討される大規模修繕工事を前提に、用語の違いも分かりやすく解説します。

大規模修繕はマンションの一大プロジェクト

大規模修繕は、工事を発注して終わりではありません。
「何を・どこまで・どう進めるか」を、管理組合として整理して決定し、関係者と足並みをそろえながら進める一大プロジェクトです。

大規模修繕が必要になる理由は、大きく次の3つに整理できます。

  • 性能を回復し、住み心地を保つため
  • 安全性を確保するため
  • 資産価値を維持するため

日常の小さな修繕だけでは、建物全体の経年劣化に追いつかないことが多いです。だからこそ大規模修繕では、計画的に合意を取り、工事の品質を管理することで、将来の不具合や資産価値の低下につながるリスクを抑えていきます。

建築基準法の「大規模の修繕」とマンションの「大規模修繕」

まず、国土交通省ガイドライン側の定義は次のとおりです。

  • 国土交通省『長期修繕計画作成ガイドライン』の「大規模修繕工事」
    建物の全体又は複数の部位について行う大規模な計画修繕工事(全面的な外壁塗装等を伴う工事)

一方、建築基準法側でいう「大規模の修繕」は、主に”建築確認などの手続が関係し得る範囲”を判断するための概念で、主要構造部に着目します。

  • 建築基準法上の「大規模の修繕」「大規模の模様替」
    主要構造部(壁・柱・床・梁・屋根・階段)のいずれかについて、過半の改修等に該当するかで判断し、過半の判断は主要構造部ごとに行う。

マンションでイメージされる大規模修繕は外壁や防水が中心になりやすい一方、建築基準法の「大規模の修繕」は主要構造部に着目して判断します。工事範囲によっては、手続き(確認申請等)が必要な場合もあるため、計画の早い段階で確認しておくと、後戻りが少なくなります。

※法令解釈や手続きの要否は工事内容や各自治体で変わるため、最終判断は所管行政庁や確認検査機関、専門家にご確認ください。

大規模修繕工事は何年ごとに必要?

「大規模修繕は必要だと分かっているけれど、どのタイミングで、どこまでやるべきかが難しい」マンションの管理組合の検討が止まりやすいのは、まさにこの部分です。

ポイントはシンプルで、“年数ありき”で決めないこと。建物の劣化の状態と、長期修繕計画を照らし合わせて、必要な修繕内容(部位・範囲)を整理します。

大規模修繕工事の必要性

大規模修繕では、目に見える不具合だけでなく、防水層や下地、金属部など”見えにくい劣化も含めて”点検・調査し、計画的に修繕します。たとえば、外壁のひび割れや汚れは気づきやすい一方で、屋上防水の傷みや、タイルの下地の浮き、金属部の腐食といった不具合は、表面だけ見ていても分かりにくいことがあります。

見えない劣化を放置すると、ある日突然「漏水が起きた」「外壁が剥がれた」といった形で表面化し、生活への影響や安全面の心配につながりやすくなります。だからこそ大規模修繕は、症状が出てから慌てるのではなく、計画的に点検し、必要な範囲を早めに手当てすることが大切です。

大規模修繕工事の周期の目安

大規模修繕工事の周期は何年ごとが良いのか、明確な年数の決まりはありません。同じ築年数でも、立地や仕様、過去の修繕履歴、日常管理の状態によって、劣化の進み方は異なります。
ただし、一般的には12〜15年程度で設定されるケースが多いとされています。

そこで役に立つのが、長期修繕計画です。現地調査などで劣化の実態を把握し、計画と照らし合わせて、「いま本当に必要な工事」と「まだ先でもよい工事」を整理していくことが大切です。

※国土交通省のガイドラインでも、修繕の「時期(周期)」はおおよその目安であり、立地条件等により異なり得る旨が示されています。

周期が早まる・遅れる場合

大規模修繕のタイミングが前後するのは、珍しいことではありません。たとえば、次のような条件があると、周期が早まったり遅れたりします。

  • 立地条件:海沿い・風が強い・寒暖差が大きいなどで劣化が進みやすい
  • 仕様・仕上げ:材料や工法の違いで耐久性が変わる
  • 過去の修繕の質:前回の修繕の出来・管理状況で劣化の出方が変わる
  • 不具合の履歴:漏水やクレームが多い部位は優先度が上がりやすい

大規模修繕では、工事内容を部位ごとに整理し、安全性や生活への影響が大きいものを踏まえて、優先順位を決定します。

次のような周期で行うのが一つの目安です。(※令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査より)

  • 第1回:築12〜15年頃(築15年以下が最多)
  • 第2回:築26〜30年頃が多い(中央値28年)
  • 第3回以降:築40年前後〜41年以上が多い(中央値40年)

大規模修繕工事の対象と流れ

大規模修繕工事の対象と工程を整理します。理解しておくと、説明資料や見積内容も把握しやすくなり、検討が進めやすくなります。

大規模修繕工事の対象

マンションの大規模修繕で中心になるのは、基本的に共用部分です。代表的な対象は次のとおりです。

  • 外壁:ひび割れ補修、浮き・剥離の補修、シーリング(目地)の打ち替え、塗装など
  • 屋上・バルコニー防水:防水層の補修・改修(雨漏りの予防・再発防止の要)
  • 金属部:手すり、扉、階段、メーターボックスなどのケレン(サビ落とし)・塗装
  • 共用部:共用廊下・階段・エントランス等の床や壁の補修、照明・サイン類の整備 など
    (※専有部と接する部位も含めて調整が必要な場合があります)

見た目をきれいにするだけでなく、下地の状態(浮き・欠損・鉄筋の露出(コンクリートの爆裂・剥落)・腐食)を直し、劣化の進行を止め、「建物を長持ちさせるための手当て」を行います。

大規模修繕工事の流れ

大規模修繕工事は次の流れで進みます。

  1. 仮設:足場の設置、養生、飛散防止ネットなど(安全確保と作業環境づくり)
  2. 下地:ひび割れ補修、浮き補修、欠損補修、シーリング工事など(“土台を直す”工程)
  3. 仕上げ:塗装や仕上げ材の施工(保護と美観の回復)
  4. 防水:屋上・バルコニー等の防水工事(雨水の侵入を止める要)
  5. 検査:工程内検査→完了検査、是正(手直し)確認、記録の整理

下地が不十分なまま仕上げをしても、トラブルが再発しやすくなるため、報告書等では、下地補修の範囲・数量、工程内検査の結果、是正内容を意識して確認しましょう。

設備更新も行うか?修繕と更新

大規模修繕を検討していると、「設備や配管も一緒に工事するべきか?」もよく検討されますが、外壁・防水などの「修繕」と「設備更新」は、性質が異なるため注意が必要です。

  • 修繕(外壁・防水など)
    劣化を補修して、性能を回復・維持する
  • 更新(設備・配管など)
    寿命を迎える前後で、計画的に入れ替える(故障・漏水リスクの低減)

設備・配管は、劣化が表面に出にくく、故障や漏水で初めて気づくこともあります。そのため、“今回の大規模修繕で必ず全部やる”と決め打ちするのではなく、長期修繕計画や劣化診断の結果を踏まえて、まとめると合理的なもの(工事の重なりが大きい、足場が共通など)と、まだ先でもよいもの(状態が良い、更新周期が別、調査が必要)を切り分けるのがおすすめです。

「修繕」と「更新」を整理しておくと、次の章で解説する進め方や合意形成もスムーズになります。

大規模修繕工事開始までの流れ

大規模修繕は工事そのものが始まるまでの準備に時間がかかり、検討開始から着工まで1〜1年半程度かかるケースもあります。(マンション規模や合意形成の状況により、場合によってはさらに長期化することもあります)ここでは、工事開始までの流れを整理します。

修繕委員会の立ち上げ

まず、マンション理事会で大規模修繕の検討が本格化したら、管理組合内で体制づくりを行います。一般的には、理事会の諮問機関として「修繕委員会」を設け、修繕委員会が検討の中心を担う形が多いです。

進め方の決定

修繕委員会の体制が整ったら、次は「どう進めるか」を具体化します。検討事項は多岐にわたるため、委員会だけで進行が難しい場合は、外部専門家(設計・監理を担う設計事務所・コンサルタント等)の活用も選択肢になります。

あわせて、現地調査・劣化診断などで建物の状態を把握し、次のような基本方針を整理します。

  • どこを優先するか(漏水リスク/安全性/生活影響 など)
  • 今回やる範囲と、次回に回す範囲
  • 工事中のチェック(品質管理)をどう担保するか

ここが固まるほど、次の「業者選定」で比較条件が揃いやすくなります。

施工会社の決定・居住者説明会

次に、施工会社の選定に進みます。選定方法はいくつかあり、1社を指名して検討する方法、複数社で見積を比較する方法、公募や指名で入札を行う方法など、手法はいくつかありますが、仕様・範囲・検査方法などの”比較条件を揃える”ことが重要です。

施工会社が決まり、工事内容や期間の概要が見えてきたら、次に行うのが居住者向け説明会です。工事が始まると、バルコニーの使用制限など生活への影響が出るため、事前に不安点を洗い出し、質疑応答を通して納得感を作っておくことが重要になります。

最後に、資材置場や現場事務所などの準備を進め、着工へ進みます。

工事中のトラブル

大規模修繕は、多くのマンションで住民が居住しながら工事が行われます。そのため、足場の設置やバルコニー立入、騒音・においなど、生活への影響が避けられません。事前に住民への周知を行い、トラブルを最小化しましょう。

生活ストレス・防犯/プライバシー・クレーム対応

住民トラブルの多くは、工事そのものより「聞いていなかった」「急に制限された」という周知不足から起きます。工事開始前(着工前)に、次のような影響を具体的に周知しておきましょう。

  • 音・におい・粉じん:大きくなりやすい工程と時間帯
  • 窓・カーテンの扱い:作業中の開閉制限や視線への配慮
  • 洗濯物・バルコニー:使用制限の期間、立入のタイミング
  • 動線・共用部:通行制限、養生範囲、エレベーターの扱い

ポイントは「いつ・どこで・何が起きるか」を分かりやすくお知らせすることです。掲示・配布・ポスト投函などを活用し、見落としが起きにくいようにしましょう。

また足場設置中は、外部からの侵入リスクや、室内が見えやすくなる問題が増えます。住民側の施錠の徹底、窓際の貴重品管理、カーテン・目隠しの活用などの注意喚起だけでなく、現場側の対策も合わせて運用することが重要です。

周知を行っても、クレームはゼロにできません。窓口を一本化し、対応方法を予め決めておき必ず記録を残すことで「言った・言わない」「放置された」という住民側の不満が減り、対応しやすくなります。

まとめ|大規模修繕を”資産と安全”の再設計につなげる

大規模修繕は、外壁や防水を直して終わりではありません。
「いまの建物の状態」を正しく把握し、優先順位を決め、次回の修繕に向けた記録を残す。この一連のプロセスは、マンションの資産性安全性を同時に立て直す機会です。目先の不具合対応にとどめず、資産と安全を整える機会として活かしましょう。

修繕は資産価値を守る

大規模修繕は、外壁や防水を直して見た目を整えるだけの工事ではありません。

本質は、マンションを”この先も選ばれる資産”として維持・向上させるための再設計です。

  • 劣化を早めに止めて、将来の大きな損失を防ぐ
  • 管理状態を”見える化”して、買い手・借り手に安心を示す
  • 次の意思決定をラクにし、長期的に価値を保つ運営に変える

大規模修繕は、傷んだ箇所を直すだけでなく、将来のトラブルや資産価値低下につながる点を潰し、マンションの評価を積み上げていく大きなチャンスです。

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この記事を監修した人

耐震建築家 山本 健介

耐震建築家 山本 健介

さくら構造株式会社

一級建築士、構造設計一級建築士

1978年北海道札幌市生まれ。大学卒業後、地元の住宅メーカーに勤務し、2008年にさくら構造へ中途入社。現在は札幌第二設計室室長を務める。独自の高耐震基準「TSUYOKU」の開発マネージャーとして、地震に強い暮らしを実現するための研究に取り組んでいる。

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