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耐震コラム

築古ビルの空室対策で見落としがちな耐震性|入居判断で不利になるポイントとは

築古ビルの空室対策というと、つい内装のリニューアルや設備更新に目が向きますよね。エントランスをきれいにして、照明を明るくして、共用部も清掃を徹底、そこまでやったのに、なかなか埋まらない。そういう相談は、実は少なくないんです。

耐震性の問題は空室対策では後回しにされがちです。でも実際には、入居を検討するテナント側の判断軸に、建物の安全性・耐震性が含まれていることは珍しくありません。

この記事では、「耐震性が入居判断にどう絡んでくるか」「オーナーとして何を整理しておくべきか」について整理します。

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築古ビルの空室対策で、耐震性が後回しになりやすい理由

築古ビルの空室対策として、エントランスを整える、照明を明るくする、空調を更新する。こうした改善はもちろん大切ですし、実際に効果が出ることもあります。

ただ、そこまで手を入れても、なかなか埋まらないケースがあります。

このとき、オーナー側はつい「立地の問題かな」「賃料がまだ高いのかな」と考えがちです。もちろん、そうした要因が関係することもあるでしょう。

内装の古さは、写真でも現地でも一目で伝わります。設備の古さも、募集図面や内見時の印象に出やすいですよね。ところが、建物が旧耐震基準の可能性があるか、耐震診断を受けているか、補強済みなのかといった耐震性にまつわる情報は、こちらから整理していない限り伝わりません。

なぜ耐震性が入居判断に影響するのか

一般的に、昭和56年(1981年)5月31日以前の耐震基準で建てられたビルは、旧耐震基準の建物に該当する可能性があります。旧耐震基準の建物は、新耐震基準の建物に比べて、大地震時の被害リスクが相対的に高い可能性があるとされており、築古ビルを検討するテナント側が、建築年や耐震性を気にすることも少なくありません。

特に法人テナントでは、「駅から近い」「賃料が安い」といった条件だけでなく、事業継続の観点から建物の安全性を気にするケースがあります。BCP、つまり災害時に事業をどう継続するかという視点です。BCPを厳密に文書化している企業でなくても、「地震が来たとき、この建物は大丈夫か」は、入居判断の背景に入りやすい論点です。

たとえば、従業員を多く抱える会社、顧客対応が止まると影響が大きい業種、安全配慮への説明責任を意識しやすい法人ほど、建物の耐震性を重視する傾向があります。

もちろん、すべての入居希望者が「耐震診断報告書を見せてください」と言うわけではありません。ただ、建築年を見て旧耐震かもしれないと気づいたり、仲介会社を通じて「耐震性はどうですか」と確認したりする場面はあります。明確に断られなくても、最後の比較で外される。そんな影響の出方も十分ありえます。

「見た目を整えたのに埋まらない」背景にあるもの

築古ビルの空室対策でよくあるのが、「できる範囲の改善はしたのに決まらない」という悩みです。

  • 共用部をきれいにした
  • 照明も変えた
  • トイレや給湯室も直した
  • 募集条件も見直した

それでも、反応が弱い。あるいは内見までは進むのに、申込みにつながらない。こういうとき、もちろん立地や周辺相場、面積帯とのミスマッチも疑うべきです。ただ、それだけで説明しきれないケースもあります。

そのひとつが、建物そのものへの漠然とした不安です。

テナント候補者は、必ずしも建築の専門家ではありません。
だからこそ、「この建物、なんとなく不安かもしれない」という印象が、そのまま意思決定に響くことがあります。見た目が整っていても、建築年が古い、構造がよくわからない、耐震性について説明がない。そうなると、条件が同程度の別物件に流れやすくなることは十分考えられます。

設備や内装の更新だけでは超えられない壁が、そこにあるかもしれません。

テナントは耐震性をどう見ているのか

テナント側が耐震性を確認する経路は、いくつかあります。

まず多いのが、建築年からの推測です。
物件概要に築年が載っていれば、「このビルは旧耐震かもしれない」と考えるきっかけになります。そこから、不動産会社や仲介担当者を通じて、耐震診断の有無や補強の実施状況を確認するという流れが一般的です。

次に、内見時や申込み前の確認です。
特に法人テナントでは、最終候補に残ったあとで社内確認が入り、その段階で安全性や建物情報が論点になることがあります。ここで耐震性に関する説明ができるかどうかは、案外大きなポイントです。

重要なのは、「未補強だから即NG」ではなくても、「よくわからない状態」が判断を鈍らせることです。

逆にいえば、耐震診断の有無や、必要に応じてどのような対応を取っているかを説明できるだけでも、印象は変わります。

とくに法人テナントは、最終的に社内稟議や上長承認が必要になることもあります。
そのときに、「築古だけど、耐震性については整理されている」「必要な確認をしている」と説明できる物件は、候補として残りやすくなります。

耐震性そのものだけでなく、耐震性にどう向き合っているか
そこも、実は見られているポイントです。

空室対策として、設備更新の前に確認したいこと

築古ビルの空室対策では、設備更新や内装改善が先に出てきやすいです。
それ自体は合理的ですし、必要な投資でもあります。

ただ、建物の基本的な安全性に不安が残っている場合、その投資が十分に効かないことがあります。「設備の弱さ」が空室の原因だと思っていたら、実は「建物への不安」が先にある、ということです。

だからこそ、設備にお金をかける前に、次の3点は整理しておきましょう。

  1. 建築年
  2. 耐震診断の実施有無
  3. 補強履歴の有無

ここが整理できていないまま、内装や設備の更新だけを進めると、「見た目は良くなったけど、根本の不安要素はそのまま」という状態になりかねません。

そもそも自分のビルが耐震診断を受けるべき状態なのか整理したい場合は、旧耐震ビルの見分け方や診断の進め方をまとめた記事も参考になります。

耐震改修を「リーシング上の改善策」として捉える視点

耐震改修という言葉を聞くと、「大掛かり」「高額」「すぐには決めにくい」と感じるオーナーは多いと思います。実際、費用も工程も無視できません。

ただ、ここで視点を少し変えてみましょう。

耐震改修は、安全対策のための工事であると同時に、入居判断上の弱点を減らすための改善策でもあります。

テナント候補が、

「この建物は旧耐震だから不安」
「耐震性がよくわからないから見送ろう」

と感じているなら、その不安がなくなることで候補に残りやすくなる可能性があります。

つまり、耐震改修は単なる保全コストではなく、リーシング面でのマイナス要素を減らす投資として見ることもできるわけです。

もちろん、どの建物でも必ず入居率が改善すると言い切ることはできません。
立地や面積帯、賃料水準、周辺競合など、他の要因もあります。
でも、少なくとも耐震性への不安がボトルネックになっている場合、それを放置したまま設備更新だけを進めても、効果が限定的になりかねません。

融資や売却を検討する場面では、旧耐震かつ未診断・未補強という状態が、不利に見られる場合があります。

賃料・空室率に影響しやすい場面

耐震性の問題が表面化しやすい場面を、少し整理しておきましょう。

賃料交渉

建物の耐震性に不安があると、テナント側がそれを値下げ交渉の材料にすることがあります。明確に「旧耐震だから安くしてほしい」と言われる場合もあれば、なんとなく条件面で押される形になることもあるでしょう。

テナント属性

BCP意識の高い法人や、安全配慮に敏感な業種ほど、耐震性を気にする傾向があります。結果として、そうした層が候補から外れやすくなれば、狙えるテナントの幅が狭まってしまいます。

空室期間の長期化

決定打に欠ける状態が続くと、成約までの時間が伸びます。1件ごとの理由は小さくても、その積み重ねが空室期間の長期化につながることは十分あります。

建て替えや一棟リノベーションまで含めて判断したい場合は、建て替えと一棟リノベーションの比較記事を確認してみてください。

オーナーが最初に整理したい判断軸

では、空室対策の中で耐震性が気になってきたとき、何から整理すればいいのでしょうか。
いきなり「補強するかどうか」を決めにいく必要はありません。まずは現状把握からはじめましょう。

  1. 建築年を確認する
  2. 診断や補強の履歴を確認する
  3. 空室の実態と仲介現場の反応を整理する
  4. 必要に応じて専門家へ相談する

耐震性の不安を放置するリスクを軽く見ない

「今のところ、入っているテナントもいるし、そこまで気にしなくてもいいのでは」
そう思うオーナーもいるかもしれません。

たしかに、今すぐ空室が一気に増えるとは限りません。

しかし、耐震性への意識は、大規模地震のたびに高まりやすく、テナントや仲介会社が建物の安全性を以前より気にする場面は今後も続くと考えられます。

しかも、耐震性の問題は、ある日突然大きく効いてくることがあります。
普段は表面化していなくても、競合物件が増えたとき、法人テナントを狙いたいとき、売却や融資を考えたときに、比較項目として浮かび上がってくるものです。

まとめ

築古ビルの空室対策では内装や設備も大切ですが、建物の耐震性への不安が影響しているケースはあります。

空室対策を本気で進めるなら、設備更新や内装改善とあわせて、建物の耐震性がどんな状態かも整理しておきたいところです。建物の状態を整理しておくことで、次にやるべきことは見えやすくなります。

耐震改修を、「安全対策のための工事」とだけ捉えるのではなく、「入居判断上の弱点を減らすための改善策」として見ると、空室対策の一部として考えやすくなるかもしれません。

ご自身のビルが、リーシング上どこで不利になっているのか。
リボビルでは、耐震性の観点も含めて、建物の現状とこれからを一緒に整理していきます。

お気軽にご相談ください。

この記事を監修した人

耐震建築家 田中 真一

耐震建築家 田中 真一

さくら構造株式会社 代表取締役社長

一級建築士、構造設計一級建築士

さくら構造は、2025年現在、社員数150名、売上高20億円を超える規模を有し、非木造建築においては構造設計棟数で全国トップクラスを誇る高耐震設計グループである。独自の高耐震基準「TSUYOKU」を開発し、地震に強い暮らしを実現するとともに、日本の構造設計を世界に誇れる仕事へと発展させるべく、日々研究に取り組んでいる。

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