中古住宅の購入や売却、住宅ローン控除(減税)・贈与の非課税などで「耐震基準適合証明書が必要」と言われても、何を証明する書類で、期限や費用、進め方が分かりにくいものです。
とくに築年数の古いマンションでは、管理組合の資料の有無や改修履歴の確認が必要になり、早めの準備が重要です。
本記事では、耐震基準適合証明書が必要になる場面から、取得の進め方などを初めての方でもわかりやすく解説します。
1. 耐震基準適合証明書は何のための書類?
耐震基準適合証明書は、既存建築物が“耐震基準に適合していることを証明するための書類です。とくに中古住宅・マンションでは、税制優遇(住宅ローン控除など)の手続きで「耐震性を示す根拠書類」が求められる場面があり、そこで使われるのが耐震基準適合証明書です。ここではまず、耐震基準適合証明書が必要になる場面と、書類の位置づけを整理します。
1.2. 耐震基準適合証明書とは
耐震基準適合証明書は、既存建築物について調査・確認を行ったうえで、耐震基準に適合していることを所定の様式で証明する書類です。対象は一戸建てだけでなく、中古マンションなど共同住宅も含まれます。国土交通省は、住宅ローン控除(住宅ローン減税/住宅借入金等特別控除)で用いるための証明書様式を公開しています。
耐震基準適合証明書には、次の事項が記載されます。
- 所在地など、どの住宅についての証明か
- 耐震基準に適合していると、所定の調査に基づき判断されたこと
- 調査・証明の年月日(証明年月日等)
(参照:【様式】耐震基準適合証明書(国土交通省))
耐震基準適合証明書は税務・各種制度の手続きで用いる根拠書類です。そのため、取得の可否や要件(期限・築年など)を曖昧にしたままだと、要件を満たせず住宅ローン控除(住宅ローン減税/住宅借入金等特別控除)などの適用を受けられない可能性がある、または確定申告で追加書類を求められることがあります。
1.3. 耐震基準適合証明書が必要になる手続き
耐震基準適合証明書は、一戸建てだけでなく中古マンションの購入・売却でも、次のような税制優遇の手続き(確定申告等)で提出が求められることがあります。
-
住宅ローン控除(住宅ローン減税/住宅借入金等特別控除)を使うとき
中古住宅などで「耐震基準に適合する建物であること」を示す必要があるケースでは、添付書類の一つとして耐震基準適合証明書が挙げられています(ほかに建設住宅性能評価書、既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書などの選択肢が示されることもあります)。 -
住宅取得等資金の贈与税の非課税措置など、耐震性が要件に絡む税制を使うとき
制度の要件に応じて「耐震性を満たすこと」の証明として、耐震基準適合証明書等の提出が求められる場合があります。 -
要耐震改修住宅(耐震基準不適合既存住宅)を取得し、取得後に耐震改修を行うとき
国土交通省の案内では、入居期限の特例や申告書兼証明書の様式、申請書様式等が整理されています。
2. 耐震基準適合証明書を取得するメリット
耐震基準適合証明書は、「必ず取らなければならない書類」ではありません。ただし、取得しておくことで手続きや判断がスムーズになる場合があります。
2.1. メリット1|税制優遇
耐震基準適合証明書を取得するメリットの一つは、住宅ローン控除などの税制優遇に対応しやすくなることです。
- 「住宅ローン控除」の適用(所得税等の還付)
- 「登録免許税」の軽減(登記費用の削減)
- 「不動産取得税」の軽減
- 「地震保険料」の10%割引
- 「固定資産税」の減額(耐震改修を行った場合など)
- 住宅取得等資金に係る「贈与税」の非課税措置の適用
中古住宅・マンションでは、築年数だけを見ると制度の対象外に見えるケースでも、「耐震基準に適合していること」を所定の書類で示すことで、制度の要件を満たせる場合があります。
その耐震性を示す根拠として使われるのが、耐震基準適合証明書です。耐震基準適合証明書がない場合、追加資料を求められて申告が遅れたり、結果的に控除を受けられないことがあります。
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2022年の税制改正により、1982年(昭和57年)1月1日以降に建築された物件は、この証明書がなくても住宅ローン控除の対象となりました。ただし「旧耐震基準」の物件を検討されている場合、耐震基準適合証明書は重要な書類です。
2.2. メリット2|売買の説明
耐震基準適合証明書は、「この建物は大丈夫なのか?」という不安に対する、説明の根拠になります。
とくに旧耐震基準の住宅・マンションでは、次のような場面が少なくありません。
- 買主や家族から耐震性を心配される
- 金融機関や関係者に説明を求められる
- 感覚的な説明になり、話が進みにくい
耐震基準適合証明書があれば、 「耐震基準に適合していることが、所定の手続きに基づき証明されている」 という事実を、書類として示すことができます。
結果として、説明にかかる時間や心理的なハードルが下がり、売買や意思決定が進めやすくなります。
2.3. メリット3|耐震性の現状把握
もう一つの重要なメリットは、建物の耐震性の現状を整理できることです。
耐震基準適合証明書を取得する過程では、現地調査や図面確認などを通じて、「現時点でどの程度の耐震性が確認できるか」などの情報が整理され、次の判断材料になります。
- このまま使い続けられるのか
- 将来的に耐震改修が必要か
- 売却・保有・改修のどれが現実的か
次の章では、こうしたメリットを踏まえたうえで、「旧耐震の住宅・マンションで、耐震基準適合証明書を取得できるのか」について整理します。
3. 旧耐震の住宅で「耐震基準適合証明書」を取るのは厳しい?
旧耐震基準の住宅・マンションについて調べている方の多くが感じるのが、「そもそも、耐震基準適合証明書って取れるの?」「現実的にかなり厳しいのでは?」という不安です。
とはいえ、旧耐震基準の建物すべてが耐震基準適合証明書を取得できないわけではありません。 ただし、いくつかの条件によって取得の難易度が大きく変わるのは事実です。ここでは、まず確認すべきポイントを整理します。
3.1. 建築年・確認時期
最初に確認すべきなのは、建築年月日や確認時期です。一般に、1981年(昭和56年)6月1日より前に建築確認を受けた建物は「旧耐震基準」(※1)と呼ばれ、それ以降の基準で設計された建物と比べて、耐震基準適合証明書の取得のハードルは高くなりやすい傾向があります。
旧耐震基準の場合には、耐震診断により耐震性が確保されているのかを確認する必要があります。耐震診断の結果、耐震性が確認できれば耐震基準適合証明書を発行できますが、基準を満たさない場合には、耐震補強設計および耐震補強工事が必要になります。
※1 1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認を受けた建物は「新耐震基準」と呼ばれ、2022年の税制改正により、耐震基準適合証明書がなくても住宅ローン控除の対象となりました。
3.2. 証明時期は取得日前2年以内
耐震基準適合証明書で注意すべきなのは「調査・証明の時期」です。税制優遇(住宅ローン控除など)の要件では、耐震基準適合証明書などにより、取得日前2年以内(※2)に家屋調査等が終了していることが求められるケースがあります。
過去に耐震診断・耐震改修を行っている場合でも、その調査・証明がいつの時点の内容かによっては要件を満たさないことがあります。耐震性自体に大きな問題がない場合でも、要件を満たすために改めて調査や確認が必要になることがあります。
※2 耐震診断・耐震改修工事を行った時期は2年以内である必要はありません。耐震診断・耐震改修工事が適切に行われていたかの調査等を実施した日が、取得日2年以内であることを指します。
4. 取得の進め方・間に合わない時はどうしたらいい?
耐震基準適合証明書を取得するためには、依頼先選びと事前準備が重要です。特に中古住宅・マンションの売買・申告はスケジュールがタイトになりやすく、「資料が足りない」「期限に間に合わない」といったトラブルも起こりがちです。ここでは、依頼先や取得までの流れ、間に合わない時の対処法について整理します。
4.1. 依頼先
耐震基準適合証明書は「自分で作る書類」ではなく、所定の要件に沿って調査・確認できる専門家が発行する書類です。依頼先は複数ありますが、よく相談されるのは「建築士」「指定確認検査機関等」の2つです。
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建築士(設計事務所など)
物件の状況に合わせて、図面確認・現地調査や必要に応じた追加調査を依頼できるのが強みです。図面が不足しているなど条件が厳しい物件ほど、建築士に相談しておくと進めやすくなります。
なお、建築士の中でも、私たちのような構造設計を専門とする構造設計事務所や、建物の耐震分野に詳しく、地震大国・日本の建物を支える構造設計のプロフェッショナルである「耐震建築家」などの専門家への依頼がおすすめです。
>耐震建築家についてはこちら -
指定確認検査機関など
様式・提出の実務がスムーズに進むケースがあります。ただし、対応範囲は機関・担当者により異なるため事前確認が必要です。
4.2. 取得までの流れと必要書類
耐震基準適合証明書の取得までの流れは次のとおりです。
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目的の明確化
「住宅ローン控除」「贈与の非課税」など、何の手続きで必要かを明確にします。取得の目的が「税制の要件を満たすための証明」なのか、「将来の改修判断まで含めた精査」なのかで、必要な確認内容が変わります。 -
物件情報の確認
最優先は、登記事項証明書や建築台帳(台帳記載事項証明書/建築計画概要書など)を揃えて、築年・構造種別・建物用途・所在地、確認時期などから旧耐震基準に該当する可能性があるかを確認します。 -
図面・改修履歴の確認
確認申請図、構造図、計算書、改修図、改修の工事記録 などの図面が揃うと、調査が進めやすく、費用も読みやすくなります。 -
現地調査・追加調査
現地で整合を取り、必要なら追加調査(非破壊調査など)を行い、条件を満たせる見通しが立てば証明に進みます。 -
耐震診断
耐震診断により耐震性が確保されているのか確認する必要があります。耐震診断の結果、耐震性が確認できれば耐震基準適合証明書を発行できますが、基準を満たさない場合には、耐震補強設計および耐震補強工事が必要になります。
また、耐震基準適合証明書の取得にかかる費用や期間は、物件や状況によって異なるため、見積前に見積もりを早く正確にするには、最初に 利用する制度、取得(引渡し)予定日、築年、図面の有無を伝えておきましょう。
4.3. 耐震基準適合証明書が取得できない場合
「耐震基準適合証明書の取得が間に合わない」「取得できない可能性がある」などの場合は、“耐震性をどう証明するか”を、状況に合わせて別の対応を検討しましょう。
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代わりの書類で耐震性を証明する(新耐震基準の場合)
国税庁の住宅ローン控除(中古住宅・令和4年1月1日〜令和7年12月31日までに居住の用に供した場合)では、耐震性の証明として、耐震基準適合証明書のほかに建設住宅性能評価書や既存住宅売買瑕疵担保責任保険の付保証明書で代用が可能です。いずれも「取得日前2年以内」など期限要件があります。(※3) -
工事(耐震改修)で要件を満たす(旧耐震基準の場合)
現状では耐震性の要件を満たせない場合でも、取得後に耐震改修工事を行うことを前提として、住宅ローン控除等の特例措置が設けられています。ただし、申請・工期・入居期限の条件があるため、売買スケジュールを総合的に判断しましょう。(※3)
※3 住宅ローン控除は、国税庁HPでは「令和4年1月1日〜令和7年12月31日までに入居した場合」の制度として整理されていますが、税制改正大綱で令和8年1月1日〜令和12年12月31日入居まで延長の方針が示されています。また、国土交通省は、適用期限を5年間延長し「令和8年1月1日〜令和12年12月31日に入居した場合も適用可能」と公表しています。令和8年以降の適用可否・要件は、最新の公表資料・国税庁の更新情報で確認してください。(※参照)
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