耐震コラム

耐震診断で行うコンクリート調査とは?コア採取の流れと補修まで解説

コンクリート調査は、特にRC造(鉄筋コンクリート造)やSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)の耐震診断で行われる現地調査の一つです。築年数が古い建物や、図面だけでは実際の躯体状況を確認しきれない建物では、コンクリートの強度や中性化の進行状況を把握することが重要です。

コンクリート調査では、建物の壁や床からコンクリートを円筒状に採取する「コア抜き」と呼ばれる作業を行います。採取したコアは試験機関での分析され、耐震診断の判定だけでなく、耐震補強設計・耐震改修の方針立案や、築古ビルの不動産再生を検討する際の基礎情報としても活用されます。

本記事では、コア採取の全工程と補修までの流れを実際の現場の様子とともに、わかりやすく解説します。

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耐震診断におけるコンクリート調査とは

耐震診断におけるコンクリート調査とは、建物の「実際の強度」を確認するための調査です。建物の壁や床からコンクリートの一部を円筒状に採取(コア採取)し、その強度や劣化状況を確認します。

RC造(鉄筋コンクリート造)・SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)の建物を対象とした耐震診断では、設計図書に記載された数値だけでなく、現状のコンクリートが実際にどれだけの強度を保っているかを確認することが重要です。築年数が経過した建物では、設計時の想定と現状が異なる場合もあるためです。

図面が存在しない築古建物では、現地での実測調査がより一層重要になります。

また、採取したコンクリートコアは、第三者機関である試験機関へ送られ、以下のような試験が行われます。

  • 圧縮強度試験
    コンクリートが荷重に耐える力(強度)を測定します。
  • 中性化試験
    コンクリートのアルカリ性が失われる「中性化」の進行深さを確認します。
  • 密度試験
    コンクリートの密度・品質を確認します。

これらの試験結果は、耐震診断の判断材料となるだけでなく、その後の耐震補強設計や耐震改修の方針にも影響します。

コンクリート調査(コア採取)の工程

コンクリート調査(コア採取)の主な流れは以下の通りです

  1. 鉄筋レーダーによる配筋探査
  2. 養生
  3. 穿孔位置チェック
  4. アンカー打ち
  5. 穿孔機の据え付け
  6. コンクリート穿孔
  7. コア抜き取り
  8. シーラー塗布
  9. 無収縮グラウト材詰め補修
  10. 樹脂パテ材塗布による吹付けタイル凹凸模様の再現
  11. 塗装補修

次に、各工程の詳細について解説します。

実際のコンクリート調査(コア採取)の様子を動画でチェックする!

①鉄筋レーダーで壁内部の鉄筋・配管を確認する

コア採取の最初のステップは、壁の内部を鉄筋レーダーで探査することです。コンクリートの内部には鉄筋のほか、配管や電気配線が埋め込まれており、穿孔(せんこう)の際にこれらを誤って切断しないよう、事前に位置を把握します。

鉄筋の切断は建物の強度低下に直結する重大な問題です。「穴を開けて構造が弱くなるのでは」と不安に感じる方もいるかもしれませんが、まずこの探査によって、切断を避けるべき箇所を正確に把握するところから調査が始まります。

②ノロの飛散を防ぐために養生する

コア採取の作業中には、水とコンクリートの削りカスが混ざった「ノロ」と呼ばれる泥状の液体が発生します。これが周囲の壁や床、設備などに飛散・付着しないよう、作業前に養生(シートや保護材による保護)を行います。

調査後の清掃負担を軽減するためにも、この養生は欠かせない工程です。

③鉄筋を避けて穿孔位置をマーキングする

レーダー探査の結果をもとに、内部の鉄筋・配管を避けた位置に、穿孔機を据え付けるためのマーキングを行います。

わずかなズレが鉄筋に接触するリスクにつながるため、正確な位置出しが求められる工程です。

④穿孔機を固定するためのアンカーを打ち込む

穿孔機(コアドリル)を壁に固定するためのアンカーを打ち込みます。穿孔作業中にドリルがズレると、鉄筋を傷つける恐れがあるため、機械をしっかりと固定することが重要です。

このアンカー打ちの際に発生する打撃音と振動が、コア採取の工程の中で最も大きな騒音・振動となります。そのため、基本的には事前にテナントや入居者へ作業内容を案内します。

⑤穿孔機を据え付け、位置を微調整する

アンカーに穿孔機を取り付け、マーキングした位置との誤差がないよう微調整を行います。この位置合わせの精度が、鉄筋を避けてコアを採取できるかどうかを左右します。

⑥ダイヤモンドビットでコンクリートを穿孔する

穿孔には、円筒状のダイヤモンドビットを装着したコアドリルを使用します。ダイヤモンドの鋭利な刃によってコンクリートを切削するため、一般的なドリルと比べて振動・騒音を比較的抑えながら作業できます。

ただし、摩擦熱でビットが高温になるため、注水しながら冷却しつつ作業を進めます。穿孔にかかる時間は1箇所あたり数分程度ですが、作業中は音と振動が発生します。建物の利用状況に応じて、調査の日時や場所については事前に協議することが必要です。

⑦コンクリートコアを抜き取り、試験機関へ送る

穿孔が完了したら、コアを慎重に引き抜きます。この時点でコアに割れや欠けがないかを確認し、問題があれば再採取となります。

問題のないコアは丁寧に養生した上で試験機関へ送付し、圧縮強度試験・中性化試験・密度試験などを実施します。

⑧シーラーを塗布して補修材の接着性を高める

コアを採取したあとの穴は、そのまま放置するわけではありません。構造強度を維持し、仕上げを周囲に合わせるための補修を行います。

補修の最初のステップとして、穴の内部にシーラー(下塗り材)を塗布します。シーラーを塗ることで、次工程で充填するグラウト材がしっかりと接着し、補修の品質が高まります。

⑨無収縮グラウト材を充填する

コアを採取したあとの穴に「無収縮グラウト材」を充填します。無収縮グラウト材は、既存のコンクリートと同等以上の強度を持つ補修材で、硬化時に収縮しない特性があります。収縮によるひび割れや隙間が生じにくく、構造強度の維持に配慮した補修が可能です。

⑩樹脂パテで既存仕上げの凹凸を再現する

無収縮グラウト材が硬化した後、周囲の壁仕上げに合わせて樹脂パテを使用し、吹付けタイルなどの凹凸模様を再現します。仕上げの質感を近づけるための工程です。

⑪塗装補修で周囲の色に合わせる

最後に塗料を重ね塗りし、周囲の壁色に合わせた塗装補修を行います。ただし、経年変化した既存壁と新しい塗装では、どうしても色の差が出る場合があります。気になる場合は、補修箇所だけでなく壁面全体の塗装を検討することもあります。

コンクリート調査(コア採取)の注意点

コンクリート調査(コア採取)を実施する前の注意点は次の通りです。

  1. 騒音・振動が発生するため事前調整が必要
    アンカー打ちや穿孔作業では、一定の騒音と振動が避けられません。病院・学校・ホテル・オフィスビルなど、利用者への影響が大きい建物では、調査の日時や作業箇所について、あらかじめ関係者と十分に協議しておくことが重要です。
  2. 調査箇所は勝手に決められるものではない
    コア採取の位置は、鉄筋や配管の位置、構造上の適否、建物の利用状況や仕上げ状態などを考慮したうえで決定します。「どこでも開けられる」というわけではなく、専門的な判断のもとで位置が選定されます。
  3. 補修後も跡が完全に消えるとは限らない
    塗装による補修を行っても、長年の経年変化がある既存壁との色合いを完全に一致させることは難しい場合があります。調査前に仕上がりのイメージについても確認しておくとよいでしょう。

コンクリート調査(コア採取)の結果は耐震診断・補強設計にどう使われるのか

採取したコンクリートコアは、第三者機関である試験機関へ送られ、圧縮強度試験、中性化試験・密度試験などの試験が行われます。

圧縮強度試験の結果は、建物の耐震性能を評価する計算の基礎データとなります。コンクリート強度が設計値より低い場合、耐震性能の評価に影響が出ることがあります。

中性化試験の結果は、鉄筋腐食リスクや建物の耐久性評価に関係します。中性化が進行している建物では、補強工法の選定にも影響することがあります。

これらの調査結果は、耐震診断の判定だけにとどまらず、耐震補強設計・耐震改修の方針立案や、築古ビルの不動産再生を検討する際の基礎情報としても活用されます。図面が残っていない建物では、こうした現地調査の重要性がとりわけ高くなります。

コンクリート調査に関するよくある質問

よくある質問をご紹介します。

Q1. コア採取で建物の強度に影響はありますか?

コア採取では建物の一部に穴を開けますが、調査箇所は鉄筋の位置や構造上の影響を確認したうえで選定します。また、採取後の穴はそのままにせず、無収縮グラウト材などを用いて補修します。ただし、建物の状況や調査箇所によって対応は異なるため、事前に専門会社へ確認しましょう。

Q2. 調査中に騒音や振動は発生しますか?

はい。アンカー打ちや穿孔作業では、一定の騒音・振動が発生します。特に、穿孔機を固定するためのアンカー打ち込み時は音や振動が大きくなりやすい工程です。テナント、入居者、施設利用者がいる建物では、調査日時や作業場所について事前に調整しておくことが大切です。

Q3. コア採取後の穴はどのように補修されますか?

コア採取後の穴はそのまま放置せず、シーラーを塗布したうえで、無収縮グラウト材などを充填して補修します。その後、必要に応じて樹脂パテや塗装を行い、周囲の仕上げに近づけます。ただし、既存壁と完全に同じ色や質感に戻すことは難しい場合があります。仕上がりが気になる場所は、事前に補修範囲や塗装方法を確認しておくとよいでしょう。

まとめ

コンクリート調査(コア採取)は、RC造・SRC造建物の耐震診断において、建物の実際の強度と劣化状況を把握するために行われる重要な現地調査です。

鉄筋レーダーによる探査から始まり、養生・穿孔・コア採取・試験機関への送付、そして補修・塗装まで、複数の工程が丁寧に積み重ねられています。騒音・振動の発生や補修後の仕上がりについては、事前に理解しておくことで、調査当日の準備がスムーズになります。

調査結果は耐震診断の判定材料となるだけでなく、耐震補強設計や耐震改修の方針にも直結します。築古のビルやマンション、施設の耐震性に不安がある場合は、まず専門会社に現状を相談することをおすすめします。

リボビルでは、耐震診断・耐震補強設計から不動産再生まで、建物の状況に応じてワンストップでサポートしています。築古ビル、マンション、施設の耐震性に不安がある方は、お気軽にご相談ください。

この記事を監修した人

耐震建築家 山本 健介

耐震建築家 山本 健介

さくら構造株式会社

一級建築士、構造設計一級建築士

1978年北海道札幌市生まれ。大学卒業後、地元の住宅メーカーに勤務し、2008年にさくら構造へ中途入社。現在は札幌第二設計室室長を務める。独自の高耐震基準「TSUYOKU」の開発マネージャーとして、地震に強い暮らしを実現するための研究に取り組んでいる。

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