これからお話しする内容は、耐震診断をして耐震補強工事費14億円といわれた巨大分譲マンションが、耐震診断・補強設計をさくら構造へ依頼したことにより、最終的に工事費約5600万円へ大幅コストダウンできた事例です。
どうしてここまでのコストダウンが出来たのでしょうか?
コストダウンの大きなターニングポイント
- 精度の高い耐震診断と最適化した補強設計
- 助成金増額のアドバイス
- 独自ネットワークによる技術力と価格が最適な工事会社の紹介
目次
成功事例
東日本大震災をきっかけに耐震性が不安視された
昭和48年(1973年)竣工の旧耐震基準である当マンションは、東日本大震災により耐震性への住民の不安が広がり、震災翌年2012年に耐震診断を実施。
その際、耐震補強工事費に提示された金額は4棟で14億円というものだった。
一方、マンション管理組合が用意していた予算は2億円、追加徴収や銀行融資をしたとしても約10億円が限界。金額の大きさに驚き、補強設計には進まないまま10年の時が経ってしまった。
2022年、もう一度耐震診断を実施することにしたマンション管理組合は、さくら構造へ耐震診断について問い合わせ、さくら構造を含めた3社の構造設計事務所で耐震診断の指名競争入札をすることとなった。
しかし、このマンションはただのSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート)ではなく、特殊な構造で造られていて・・・
物件の概要
構造種別 |
SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート) HPC工法(H形鋼プレキャストコンクリート工法) ※壁梁パネルは工場制作、柱床は現場打ち |
---|---|
棟数 | 4棟 |
階数 | 11階建て、PH2階 |
施工床面積 | 4棟合計約46,000㎡ |
用途 | 分譲マンション |
登場人物

マンション管理組合
耐震診断専門委員会

さくら構造構造設計者
2012年|耐震診断の結果、補強工事費が14億円!?
耐震性を心配するマンション管理組合は、マンション管理会社に相談し、現地調査は行わない簡易的な診断となる第一次診断を実施した。
その結果 予想補強工事費14億円!!

14億円も!?予算はせいぜい2億円・・・
住民に納得してもらうのは無理だ
予想補強工事費が14億円と言われてマンション管理組合理事は尻込み。
補強設計へ進むことなく、耐震工事は頓挫してしまいました。
耐震診断の一次・二次・三次の違いとは?
耐震診断と一口に言っても、このような種類があります。
耐震診断の内容 | ||
---|---|---|
予備診断 | 現地での目視調査、設計図書の内容の確認、建物修繕履歴等を確認し、診断レベルを判断する | |
現地調査 | 診断レベルに応じて必要な、基礎・地盤、劣化状況、部材寸法や配筋状況、コンクリート強度等の調査を行う | |
詳細診断 第二次診断以上が分譲マンション耐震助成制度の対象 |
第一次診断 計算の難易度 易しい |
壁の多い建築物が対象 柱・壁の断面積から構造耐震性能を評価 【壁式構造の団地等】 |
第二次診断 計算の難易度 難しい |
主に柱・壁の破壊で耐震性能が決まる建築物が対象 柱・壁の断面積に加え、鉄筋の影響も考慮し、構造耐震性能を評価 【学校校舎、マンション、壁の多いビル等】 |
|
第三次診断 計算の難易度 難しい |
主に梁の破壊や壁の回転で耐震性が決まる建築物が対象 柱・壁(断面積・鉄筋)に加えて、梁の影響を考慮し、構造耐震性能を評価 【体育館・劇場ホール等の大空間、壁の少ないビル、ペンシルビル等の細長いビル等】 |
2012年に実施された耐震診断は、もっとも簡易的な「第一次診断」でした。
2022年|最初の耐震診断から10年後、2度目の耐震診断へ
さくら構造にマンション管理組合から耐震診断のお問い合わせがあった
500世帯もある市のシンボル的巨大分譲マンションがなぜマンション管理会社や大手建設会社等の大企業ではなく構造設計事務所に問い合わせたのか?
住民の中には一級建築士をはじめとした建築知識を持った方が何人もおり、「耐震補強なら構造の専門家である構造設計事務所に任せたほうがよい」という判断があったから。
最終的に、さくら構造ほか大手2社の構造設計事務所に指名競争入札の声がかかりました。
マンション管理組合耐震診断専門委員会とのヒアリング
耐震診断の見積書を提出した後、指名された3社とマンション管理組合耐震診断専門委員会の方とでヒアリングが行われました。

さくら構造
構造設計者

構造設計事務所A社
営業窓口

構造設計事務所B社
営業窓口

マンション管理組合耐震診断専門委員会
構造設計事務所の出席者には大きな違いがありました。
さくら構造のみ、構造設計者が出席していたのです。
A・B社の場合

この場ではお答えできませんので、後日回答いたします。
それは技術者に確認してみないと回答できません。

見積り金額の根拠が知りたいのに具体的な回答をしてくれない・・・
さくら構造の場合

耐震補強工事の予算は、2億円までなら、修繕積立金だけで支払えます。
追加徴収や銀行融資をしたとしても約10億円が限界です。

構造計算はまだしていませんが、弊社の経験上、耐震性が高い構造である本建物は、10億円もかからないと断言できます。 弊社が診断を行えば多くても4億円ぐらいには収まると思っています。 第二次診断にすれば補強は大幅に減らせるでしょう。
さくら構造は構造を知り尽くした耐震の専門家である構造設計者が出席していたため、相談や疑問に即答できた。
さくら構造の場合 また、こんなアドバイスも行いました。

●●市の耐震診断費の助成金は少なく、耐震補強設計費と補強工事費に対する助成金はないようです。 せっかく国・東京都からの助成金があるのに、市区町村に助成金制度が無いため国、都からの助成金が使えないことになっています。

本当ですか!?でも行政に提出するような難しい書類が用意できるかどうか・・・

耐震診断に関わる業務ですので、書類の準備はお手伝いしますよ!
助成金をあきらめかけていた住民の方々へさくら構造が助言し、協力して役所へ働きかけ、市と議会を動かすことに成功。
さくら構造は、耐震設計の豊富な経験から市町村の助成金にも精通。
住民の方々と一緒に助成金制度を拡充させ、予算確保に至りました。
その結果
マンション耐震助成金が
50万円 400万円へアップ!
助成金の対象 | アドバイス前 | アドバイス後 |
---|---|---|
耐震診断 | 50万円 | 400万円 |
補強設計 | 0万円 | 800万円 |
補強工事 | 0万円 | 2045万円 |
最終的な助成金は50万円→合計3245万円となり、3195万円の増額に成功!
2012年耐震診断で14億円という数字が提示されたのはなぜ?

最初は14億円と言われたのに、どうして構造計算もしていない段階で4億円まで安くなると言えるのですか?
14億円というのは、精度が低いうえに、当分譲マンションには不向きな第一次診断によって算出された金額だから
それも特殊な構造をしていました。
低層で壁が多い建物だと第一次診断でも精度が良い診断結果となるが、本建物のように、壁は少ないが靱性が高い(粘り強い)建物の診断では過小評価されてしまう場合がある
特殊な構造とは?
当マンションの構造形式は、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)。
通常の鉄筋コンクリート造(RC造)は、コンクリート内に鉄筋だけがありますが、SRC造は鉄筋だけでなく鉄骨が入った贅沢な構造です。
耐震性や耐火性だけでなく、遮音性にも優れ、耐久性も備えています。

さらに、施工方法はHPC工法(H形鋼プレキャストコンクリート工法)。
工場制作のプレキャスト部材と現場制作部材を組み合わせた特殊工法でした。

壁と梁は鉄骨鉄筋を内蔵したコンクリートパネルを工場にて制作し、現場へ搬入。
柱と床は現場で鉄骨鉄筋を組みコンクリートを流し込み、コンクリートパネルと一体化させる工法です。
HPC工法は、中高層住宅で採用される施工精度が高く耐震性がある工法ですが、全国的に建築実績が少なく、耐震診断の計算方法には基準もなく、正確に耐震性を評価するのが難しい構造でもあります。
さくら構造が耐震診断を受注
HPC工法という特殊構造のせいか、他2社の見積りはさくら構造の倍以上の金額となりました。

見積り金額も一番リーズナブルだし、疑問をその場で解決してくれて、回答が的確!
そのうえ、助成金のアドバイスもしてもらえるなら、さくら構造に決まりだね。
ヒアリング時の対応力と見積金額から総合的に高く評価され、耐震診断はさくら構造が受注することとなりました。
耐震診断の結果
2012年 | 2022年 |
---|---|
Is=0.10 <0.80(1次診断) 必要数値の0.10/0.80=12.5% |
Is=0.51 <0.60(2次診断) 必要数値の0.51/0.60=85.0% |
※Is :構造耐震指標 ※Iso:構造耐震判定指標(1次診断だと0.80,2次診断だと0.60)
建物の耐震性の判定では、構造耐震指標Isが構造耐震判定指標Iso値以上であれば、「安全(想定する地震動に対して所要の耐震性を確保している)」とし、そうでなければ耐震性に「疑問あり」とすることによって、耐震化の必要性を確認します。
2023年|補強設計の指名競争入札が再び3社で行われた
2年目となる2023年には再び同じ3社の構造設計事務所を集めて、補強設計の指名競争入札が行われました。
こちらの補強工事には、工事の難易度が高いHPC工法の建物のうえ、第三者機関が審査する 「耐震評定」が必須という条件がありました。
既存建築物の耐震診断や耐震改修計画が適切であるかどうかを、大学教授や大手建設会社の構造設計部長クラスから構成される第三者機関が評価する審査のことです。
第三者機関は全国に20程度が点在しており、それぞれに特色があります。どこの機関に依頼するかは選ぶことができます。
さくら構造が補強設計も受注
指名競争の結果
2400万円

さくら構造
さくら構造の1.5倍の金額

構造設計事務所A社
辞退

構造設計事務所B社
A社の補強設計見積り金額は、さくら構造の金額より約1.5倍。
B社は、補強工事の難易度のせいかまたは競争に勝てない金額しか算出できなかったのか、入札を辞退したそうです。
こうして、耐震診断に引き続き補強設計もさくら構造が受注しました。
2024年|最終的な補強工事費は5580万円!
工事会社の選定時、工事見積会社をマンション管理組合に任せるのではなくさくら構造も独自のネットワークを使って探しました。
工事見積りの結果

こうして、耐震診断や補強設計以外の部分でも、耐震補強工事費の大幅コストダウンに貢献することができました。
補強量の違いは一目瞭然!
2012年 他社の補強案

2024年 補強工事後

2022年耐震診断、2023年耐震補強設計、2024年耐震補強工事と、3年かけて耐震化が完了しました。
今回は、さくら構造の豊富な実績、構造設計者による対応を高く評価していただき、14億円→5580万円の大幅コストダウンに成功しました。
助成金制度改正の働きかけにより、工事費助成金約2000万円も認可されました。
つまり、最終的に3580万円で補強工事が可能となったのです。
その結果
3580万円を約500世帯で割り算すると・・・
負担は 7万円/住戸!
まとめ|さくら構造はなぜここまで補強工事費を落とせたのか?
大幅に工事費を減額できたさくら構造ならではの3つの理由
- 01 一般的な構造ではないHPC工法の耐震補強の実績があり、その優れたポテンシャルを正しく理解しているため、建物の耐震性を過小評価せず補強工事のコスト削減ができた
- 02 豊富な実績から第三者機関に所属する大学教授等の有識者達と面識があり、建物にふさわしい機関の選定を行い、耐震性の正確な評価と適切な補強方法等の相談ができた
- 03 全国対応のさくら構造だからこそ構築できるネットワークを使い、耐震補強工事を得意とする技術力があり、リーズナブルな工事会社を紹介できた
建物の構造設計は新築設計より、耐震診断・補強設計の方が建築士によって結果が変わります。
その理由は、既存建物は形状、構法、工法、材料、時期など様々な要素によりできており、耐震診断基準(基準書)で全てを網羅することは不可能であるためです。
診断者がさまざまな検討、判断を繰り返し行うため、技術力の差により結果が50%も変わることもあります。
今回ご紹介した事例のように、実態とかけ離れた診断結果を防ぐためには、信頼できる業者へ依頼することが大切です。
健康診断をきちんとすれば、最小限の手術で済む!
名医であれば、的確な診断を下し、困難でも効果的な手術ができる!